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この企画によせて

降矢奈々とペテル・ウフナールの企画による展覧会“手から手へ・メッセージ11.3.2011”は、高い人道的使命を帯びて います。
日本がみまわれた悲劇的なできごとに思いを馳せるとき、この企画はきわめてアクチュアルなものだと言っていいでしょう。なぜな ら、この展覧会は「芸術は、絶望的な状況に置かれた人々に、どのように手を差しのべることができるのだろう?」という本質的 な問いに、答えようとしているからです。
そもそも、物質的な恩恵をまったくもたらさないビジュアル・アートは、住む家をなくし、生きていく意味さえも失ってしまったかもし れない人々に、どんな援助を提示することができるのでしょうか?
ひとつの答えは、展覧会が掲げる慈善上の目的に求められるかもしれません。
この展覧会のために制作された作品は、販売されることになっています。その売上金は、東日本大震災の被害者支援のため に役立てられます。
しかしそれは、この企画の二次的側面にしかすぎません。
この展覧会の主要な課題は、芸術という現象が、絶望の淵にある人々の生にいかによき影響を及ぼすことができるのか、という ことにあるのです。
その答えは、芸術は、精神の真価ともいうべき感性豊かな知性を育んでくれる、という事実の中に見出し得るかもしれません。 感性豊かな精神的知性を育む芸術は、現在の消費社会を変革する一助となり、精神的価値に基づく新しい社会の創造に 貢献できるはずなのです。

 マルティン・ヴァンチョ

「手から手へ」展キュレーター